目を覚ますと、もう妻は起きているみたいだった。居間に行ってみると姿がない。畑にでも野菜を採りにいったのかなぁと考えながらカーテンを開けると、庭でラジオ体操第一がはじまっていた。
まぜてくれよぉとは言わなかったけど、僕も一緒に第一を。自然と身体は東を向いていた。千切れ雲の底が朝焼けで赤くなっていた。これはいい朝だね、と妻と顔を見合わせながら、腕を前から上にあげて大きく背伸びの運動…ッ
ドアが開いて息子も外に出てきた。半袖短パンだったので服を着せに戻る。部屋の温度が気持ちいい。気が付けば10月も終わり。秋と冬の境目が分からないまま、このまま年末まで押し込まれていきそうだ。
娘の様子を見に行くと毛布にくるまって気持ちよさそうに寝ている。カメラを持って息子と朝日の方へ向かった。
1日のピークが朝いちばんにあるのも悪くない。そう思わせる朝焼けだった。
太陽の熱を感じる。この瞬間が好きで朝焼けを見ていると言ってもいいかも知れない。光に照らされた街も人も全部がきれいだ。
息子が鼻をスンとやったのでなんとなくほっぺたを触った。朝の空気で冷えてひんやりしている。この感触は雪見だいふく。そんなくだらないことを考えながら家へと帰った。あったかい服を着てきてよかったでしょ?と言うと、まぁまだ僕はいけたけどね、と小学生男子らしい台詞を言うようになった。
居間のドアをあけると、妻が野菜を刻む音が聞こえてきた。ただいまーと息子と一緒に言うと、おかえりーと言った妻の顔の辺りに、鍋から出た湯気がふらふらしていた。
ピーピーと鳴ったのは炊飯器だろうか、レンジか、それとも洗濯機か。朝は家電がにぎやかだ。僕を呼んだのは洗濯機だった。洗濯物を外に出す。濡れた服が外の空気にふれて急に冷たく感じた。それぞれ朝の支度をしていると娘が起きてきた。毛布にくるまったまま布団から這い出てきた。まだ眠そうだ。毛布のすそをしっぽみたいにズリズリやってきた娘を抱き上げた。36度8分、あたたかい。秋の終わりと冬の始まりにちょうどいい温度。