日が暮れると、小さい頃に感じた夏の夕暮れの気配があった。僕が実際に過ごしてきた夏なのか、それとも世間の人が抱く古き良き「あの夏」なのか分からない。
風呂上りの濡れた髪の子どもたちをドライヤー片手に追いかけていたことが既に懐かしい。風呂、夕飯、歯磨きと怒涛のゴールデンタイムが過ぎ去り、一息つく。田んぼの方からキジとカエルの鳴き声、冷蔵庫の製氷機からは氷がコトっと落ちる音が聞こえた。
このところ、夜になると眠くなってなにもできない。つまりは、いたって健全な生活習慣なんだけど1日が短く感じる。それでも睡魔には抗えずゆらりゆらりと寝室へ。
寝室では息子が大の字で眠っている。娘は妻の上に足を乗っけてる。元気でいいね。もちろん僕は大の字の開き具合をなんとか十文字にして自分の場所を確保する。
ベッドのフチに腰掛けながら、庭の草木をただぼんやり眺める。ただただ、窓から入ってくる夜風が気持ちいい。そういえばこの前"風致(ふうち)"という言葉を知った。
なるほど、今まさにそれだ。
十文字から再び大の字になった息子の横に並ぶ。ニンベンに大きいって漢字はあっただろうか。…そんなできた人間ではないので、まだケモノヘンかもしれない。