朝焼け3.7

目の届く範囲の、日記みたいな写真を撮っています。

父道

月曜日の午前8時30分、コンビニの駐車場。満員電車が都会で働く人たちを表すなら、朝のコンビニの駐車場が地方のそれと言えるかも知れない。

 

日曜に後ろ髪を引かれながらも、コンビニコーヒーで自分の機嫌をとって気合いで職場へと向かう。普段なら自分もその一人だけれど、今日は職場へ向かうであろうたくさんの人を駐車場で見送った。週明けの朝っぱらから僕は途方に暮れていた。先日、替えたばかりのスタッドレスがついさっきパンクした。途方に暮れるには曜日も時間も早すぎるけれど、暮れるには充分すぎる。ショックのスタッドをレスにはできないものなのか。

 

早くも、個人的2023年ベストオブうわの空って感じの時間を過ごした。しばらくして家に置いてあるノーマルタイヤとジャッキを父に頼んで持ってきてもらい、コンビニの駐車場で親子水入らずの時間を過ごせた。もういい大人だというのに、父親に頼ってしまう。大黒柱というのは近づくほどにその大きさを知るものだんだ。
僕は柱のある軸組工法の家で育ったが息子は柱のない枠組壁工法の家しか知らない。僕は息子にどんな背中を見せていけばいいのだろうか。

 

タイヤの交換作業を終えると「じゃぁ、気ぃ付けてな」と言って父は帰って行った。なんだよ、その、気を遣わせない言いぐさは。全力のありがとうしか返せない。

4分の3だけがスタッドレスになった僕の車は、大寒波を控えた水曜に震えていた。スタッドレスが4分の3で役に立つのか?4分の3でいいのはマイクロフォーサーズだけだ。

雪予報を見るとスタッドレスが欲しいけれど今から行ける店舗は予約でいっぱいだった。すると父から、タイヤが用意できたから仕事終わりに店に行きな、と連絡がきた。友人の整備士さんの所でスタッドレスを確保したらしい。こういうことを平然とやってのける。

父に言われた通り整備士さんの店へと向かい交換を済ませる。お代を払おうとすると「親父さんにツケとくから、このまま帰りな」と言われ、お代は受け取ってもらえなかった。なんなのよ、この親父たちは。

 

こういう時に、いつまでも父親は超えられない存在だなと感じる。僕らは、親世代とは父親像がだいぶ変わりつつある。自分の父と同じような役割を担おうと思っているわけではないけれど、気持ちとして、どこか追いかけている部分はある。よく、父の背中を小さく感じる時がくるとかナントカ言うけれど、僕にはまだ大きく分厚く感じる。大黒柱が強すぎる。週末はタイヤ代と好物と孫を手土産に父に会ってこよう。

我が家のように、柱のない枠組壁工法の家は床や壁などの面で建物を支える。息子に大黒柱の話をしても実感がわかないかも知れないけれど、みんなで手を取り合うことの大切さを教えていければいいかなと思っている。