今年の夏は、このアイスコーヒーに随分とお世話になった。
アイスとホット、どっちが好きかと聞かれるとホットなんだけど、それでも暑い日はやっぱりアイスを飲みたくなる。特にこの夏はいつもよりアイスコーヒーを飲んだ気がする。去年までは氷を入れたサーバーに、濃いめのコーヒーを淹れて落とす『急冷』というやり方でアイスコーヒーを作っていた。
ある日、コーヒーを飲みつつ、いつものコーヒー屋でいただく、店主の手作り新聞的なものを見返していた。その時々のおすすめの豆や、実際に産地に足を運んだ時のことなどコーヒーにまつわることが書かれている。豆知識というやつだ。
買ってきた豆を最初に飲みときは、これを読むのが密かな楽しみになっている。少しずつ枚数が増えてきてその厚さを見るとちょっと嬉しくもあった。
たまたま開いたページにおススメのアイスコーヒーの淹れ方が載っていた。急冷ではなく、ホットで淹れて冷蔵庫で冷やす方法だった。レシピを見ると、僕がいつも淹れてる急冷よりもさらに濃いめに淹れるらしい。
グラスに大き目の氷を多めにいれ、コーヒーに氷を溶かしながら飲む。文字の並びからして美味しそうだし、とてつもない満足感が得られそうだった。実際にこの日以降、アイスコーヒーは全てこの淹れ方をした。僕は酒をやらないので飲み物をチビチビやる感覚が分からないのだけど、このアイスコーヒーを飲んでるときの感覚が酒呑みの人のあの感じに近いのかなぁと思った。ようするに最高ってことだ。
飲みはじめと、氷が溶けきる頃で違う味を楽しめる。牛乳で割って飲むにもこれまたちょうどいい。
僕は気に入ったものがあると、それを食べ続けるし、使い続ける。よく言えば一途なんだけど、自分で世界を狭めてるとも言える。コーヒー豆もコロンビアを気に入ってしばらく買い続けていた。自分の好きなものから敢えて他のものに挑戦してハズレたら嫌だなぁという感覚が強いんだろう。イチかバチかより好きなものと心中したい。偏愛というか、何というか。ただ、最近エチオピアの豆のことを教えてもらい、その風味に首ったけです。冒険してみるのも悪くないなぁと感じ始めている。好きなものの範囲を少し広げていく、別の場所にも好きなものがある。今まで点だったものが面になった感じ。
同じものを使い続け、食べ続け、ずっとその場にいることで安心を得られるし、自分がソレに馴染んでいく感覚は強い。写真で言えば、僕は気に入ったレンズは付けっぱなしだ。デジタルは10年くらいずっど50mm、中判は100mmを買ってからは気に入ってずっと100mmだ。実際の写真のイイ・ワルイは別として使い勝手がいい。そして良いか悪いか、飽きがこない。たぶんこの辺りの感覚は点で感じる楽しさだと思う。
点だと深いけど範囲が狭い。それゆえ、新鮮さと成長度合いでいうと頭打ちというか下降気味なんだと思う。でも何か新しいことを取り入れてみたい気もする。かと言ってレンズは替える気はないし、買える気もしない。じゃぁ何を変えるかって言ったら、撮る場所、撮る人、撮る光。今までとは違う所で楽しさを感じようってことだ。楽しさの面を広げるというか、点と点を結ぶというか…。
とにかくそういう気持ちが芽生えてから、写真がさらに楽しくなってきている気がする。何言ってるか自分でもよく分からないけど、楽しそうと思ったらブレーキを掛ける前に反射で一歩踏み出しちゃった方がいいってことが分かった。