僕の町には四年に一度の祭がある。3つの地域に分かれ、お囃子を演奏しながら山車を曳く。
コロナ禍があり、実に8年ぶりの開催だった。
この町のお祭り
祭囃子を演奏するのは小学生から中学生くらいの子どもたち。息子はちょうど小学校に上がる年でお祭り参加となった。
お祭りは4年に一度だけれど、お囃子の練習は毎年3月の下旬に行う。ただ、お祭り同様コロナ禍がはじまってから今年になるまで練習も中止のようだった。祭りも練習もやり方や教え方など地域の人たちが記憶を頼りに、また実際に演奏したことある人たちに確認しながら今年の復活にこぎつけたみたいだ。
初日
この春、子どもたちを連れ練習場に向かった。思い返してみれば桜が咲く前には夜になると太鼓の音が聞こえていたんだった。すっかり忘れていたなぁ。太鼓の音ってのは結構遠くまで響くんだよな。練習場に入ると、地元の後輩がいた。お囃子の調子に合わせてお互い子どもの腕を持ちながら太鼓を叩く。
「ててん てん てん てん」
という独特な調子に合わせて叩く。20年ぶりくらいに叩いたけど、結構体が動く。
「体はおぼえているもんですね」と後輩と顔を見合わせて笑った。
僕の時は酒を飲む口実で指導してるようなジィ様方が中にはいて、ちょっと子ども心に居心地が悪かった。でも今はなんだかクリーンだ。育成会(子ども会)役員のパパママがいるし、練習に付き添いできている僕らのような保護者も結構多い。子どもが主体という感じがするし、何より子どもたちが楽しそうにしているのがいいじゃない。
この町も結構人の出入りがあって新しくこの地域に来てくれた人も多い。そのお陰かずいぶん子育て世帯が増え、風通しがよくなった。
桃太郎、雉はわかる。犬と猿はなぜそれだったのか。町のお祭りらしくてそんなところが愛おしいね。
小さい町だけど、中心を抜ける道の交通量はなかなかのもの。その道を規制して山車を曳くのはちょっと気分が高まる。初日の夕方かた地区の拠点に集まり、町の中心の神社を目指す。翌日は朝からお囃子がはじまる。日が落ちると提灯をつけ、来た道を戻り各拠点の小屋に屋台を納める行程だ。
二日目
昔は的屋が並んでいたけど、今回が育成会がキッチンカーを呼んでくれた。
祭りの会場に偶然いた親戚のおばちゃんにかき氷を買ってもらった。他にも同級生やご近所さんにも会う。社会とか地域とかそういうものの存在を感じた。
提灯に明かりが灯って再び山車が動き出す。
この町でこんな人口密度なかなか経験できない。
昔は、地域の行事ってメンドクサイと思ってた。まだ僕がそれを受け止めて楽しむ余裕がなかったのかな。今、大人になってこうした行事を経験してみると素直に楽しいと思った。そして若い人や子どもたちが楽しいと感じるような行事にしていくのは、僕ら世代の役割なんだろうなということに気付いた。
「ててん てん てん てん」
春の夜に祭囃子が聞こえたら、楽しい思い出がよみがえってくる。そういう次の4年間にしていきたな。